大正処女御伽話 第十七話 「九月一日 -2-」レビューです。
大正十二年九月一日、関東大震災発生。
起き上がることすらままならないほどの揺れ。
幸い珠彦の屋敷は崩れることもなく、屋敷にいた珠彦と綾、そして子供達は怪我することなく本震をやり過ごすことができました。
屋敷が崩れることを懸念して、屋敷の外へと避難した一同でしたが、そこから見た村の方角の空には煙が…。
慌て村へと走る綾を追いかけて、村にたどり着いた一同。
そこでは…倒壊した家々と立ち上る火と煙。
そして、助けを求める子供たち。
珠彦は手を貸そうとしますが…
” おい志摩の坊 片手でどうやって助けるつもりだ “
” 村のことは村のモンでやる手ェ出さねえでくれ “
と村の若い衆に追い払われてしまいます。
相変わらず、志摩は村の人々には嫌われているようですね。
それにしても、こんな時まで引きずるほどとは…。そんな場合じゃないだろう…というのが通じれば村社会はもっと単純ですよね。
珠彦も彼らの物言いにややショックを受けたようですが、それ以上に彼の頭を占めているのは…。
村の惨状。そして、小さな村でこの惨状であれば、
ユヅのいる東京は一体どれほどの惨状なのかという不安。
一度家へ帰るという綾の言葉を聞くのもソコソコに、ふらふらとした足取りで一人屋敷に戻る珠彦。
そして、屋敷に引きこもり、一人不安を膨らませます。
” 僕が… “
” 東京に行っておいでなんて云ったから… “
不安に押しつぶされそうになる珠彦。一人で引きこもっていると悪いイメージばかりが浮かんできます。
” ユヅ… ひとりはいやだ早く戻ってきておくれ “
一方、綾たちの家も地震で潰れてしまっていました。
その有様を見て、綾も東京にいる弟綾太郎を心配し涙します。
収まらない余震の中、ユヅを思い涙にくれる珠彦。
そんな中、再びの余震が起こります。
その時、ユヅの部屋から猫の鳴き声が…
ユヅの部屋へと行くと。隅で震えている猫と、部屋の中央に落ちていた風呂敷包み。
猫がいたことで、やや落ち着きを取り戻した珠彦は、風呂敷包みの横に落ちていた手紙に気がつきます。
その手紙はユヅから珠彦への誕生日祝いの手紙でした。
猫を膝に乗せて、ユヅからの手紙を読む珠彦。
珠彦のことを心から考えているユヅは、寒がりの珠彦のために誕生日プレゼントとしてマフラーと手袋を編んでいたようです。
風呂敷を解くと、そこにはユヅの編んだ桔梗色のマフラーと手袋。
すでに寒さを感じることのない右手の分もきちんと手袋を編んでいたユヅに愛おしさを感じる珠彦。
実は珠彦とお揃いのマフラーと手袋を自分用にも編んでいたユヅ。
” 凩身に沁む頃 二人この装ひにて 自転車で一緒にお出かけできたら “
” 私 此の上ございませんのよ “
そのユヅらしい無欲な望み
お揃いのマフラーと手袋ということに笑いがこみ上げる珠彦。すると、お腹が鳴ります。
かつてのユヅとのやり取りを思い出した珠彦は…
” …僕の腹は思ったより単純だったな “
そして、ユヅ手作りのミルクキャラメルを口にします。
その暖かさにユヅの強さを思い出した珠彦。
” 君は春の嵐 “
” そんな強く逞しい女子だったな “
嵐ってwww確かにそうだけど。。
これまで、諦めるしかない人生だったために、すぐに悲観的になってしまう珠彦。
” でも 君のことだけは諦めたくない 諦めてはいけない “
そして、改めてユヅのことがどれだけ大切なのかを認識します。
” 君のことが “
” 大好きなんだ “
幸せにすると、共に幸せになると決めた女性。
珠彦は詰襟に袖を通します。
そして、あの時ユヅが訪れ、彼女を迎え入れた玄関を、今度は一人で閉ざします。
” 一緒に帰ってこよう 二人のこの家に “
” 行こう ユヅを迎えに “
ユヅの編んでくれたマフラーを身につけ、屋敷をあとにする珠彦。
覚悟を決めたその目には強い決意が。。
前半では”早く帰ってきてくれ”と心理的にもユヅに依存しっぱなしだった珠彦が、最後には自分の足でユヅを迎えに行こうと決心したのには感動しました。
あと個人的には、冒頭の”ぽかくゆづあんか”のくだりがほっこりして好きでした。。
すっかり仲の良くなった二人。
ユヅもですが、珠彦もなかなか耐性がついてきたみたいですが…。
相変わらず、うぶな感じがいいですね。
この二人の不器用そうなやり取りはなんだかほんわかします。
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