四月は君の嘘 第11巻 著:新川直司 レビュー・感想です。
DVD付き 四月は君の嘘(11)限定版<完> (講談社キャラクターズA)
ついに最終巻です。
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・かをりと黒猫
これまでも話の重要な役割を担っていた黒猫。
飼い猫のチェルシーに始まり、公生にとっては”死”と関連深い存在ですが…。
物語が結末に近づくにつれ、黒猫の存在がより象徴的に描かれています。
公生も”黒猫の死”とかをりとを重ね合わせてしまいます。
作中でもかをりのことを”猫みたいだ”と評していますしね。
最終巻でも、随所でかをりと黒猫の対比は描かれています。特に個人的には最後の対比が切なかったですが…。まあ、それはおいおい。
・かをりの病状の悪化
病状が悪化し集中治療室に運ばれてしまったかをり。
かをりともう一度同じ舞台に立つ約束をし、ようやく彼女の病気と向かい合えた公生でしたが…。
彼女の病状の急変で”死の感覚”を再び思い出してしまった公生の心は折れてしまいます。
” 体温が冷たくなっていく感覚が 手にこびりついている “
椿からかをりのことを伝えられ、心配して様子を見にきた紘子さんに”もう無理だ”と弱音を吐く公生。
紘子さん自身、公生の母の死の当事者でその後の公生の状況も知っているわけですからね。
なかなか…。公生の痛みを一番理解しているからこそ難しい。
” 大切な人は 僕の前から去ってゆく “
” 音楽は 僕の大切な人を 連れ去ってゆく “
” 僕はひとりぼっちになる “
・演奏家という人種
さて、ピアノに公生にかをりからの呼び出し
かをりから受け取った手紙には…
” カヌレ食べたい。 “
たった1行の非常にシンプルな呼び出しです。
一緒に買い物をした際に、かをりが購入したレターセットを使用しています。
これ最初に読んだ時は普通に読み飛ばしてしまっていましたけど…。
最後の手紙もそうなんですが..。
考えてみればそもそもこのレターセットを購入したのは公生に手紙を書くためだったんでしょうね。
もしそうならば、あの時の買い物はかをりの中では本当に公生との最後の機会だと覚悟していたということなのかな。そう考えて読み直すとなんだか切ないですね。
買い物をしていた時はノリで購入していたかのような感じでしたが、かをりは真意を隠すのが上手い…というか、頑張って隠していたんですね。最後の”たった一つの嘘”もそうですし…。
しかし、死を受け入れて購入した(かもしれない)レターセットですが、奇しくも正反対の目的で使われたことになります。
かをりの要件は公生に”ある決意”を伝えること。。。
その決意とは”生きる決意”です。
かをりに催促され、公生は彼女をおぶって屋上へと向かいます。
おぶったかをりの軽さに、現実を突きつけられる公生。
“もう無理だ”と弱音を吐く公生に、2月18日東日本ピアノコンクールの日に手術をすることをかをりは告げます。
” 私が無様にあがくのも 君のせい “
” “生きること”に執着するのも 君のせい “
” 君が__ 私に__ 君といる時間への未練をくれた “
かをりは公生に問いかけます。
” 君は あがかないの? 私達 あがくの 得意じゃない “
” 私達は__ 命懸けであがく__ 演奏家じゃない “
『いちご同盟』のヒロイン直美に自分を重ね、死を受け入れてしまっていたかをりですが、公生との触れ合いで”生きようとする”ことを選びます。
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・屋上の奇跡
かをりの決意を聞いてもまだ、公生は今の状態で弾けたら”奇跡”だと弱音を吐きます。
そんな公生の目の前で、すでに自力では立つこともままならないはずのかをりが、バイオリンの演奏(エアバイオリン)を行います。
” ほら “
” 奇跡なんてすぐ起こっちゃう “
これはカッコよかったですね。本当に。
そして、
” 私の中に 君がいるよ 有馬公生君 “
と。
しかし、そんな強い彼女も一人の女の子です。
支える公生の腕の中で”迫り来る死”への怖さに
” 私を一人にしないで “
と涙します。
ここは名シーンでしたね。直前の”私の中に君がいる”に対応させたこのセリフ回し。
それにしても、はっきり言ってもうこの時点で告白しているも同然ですが、初めの”渡が好き”という刷り込みのせいか、あくまで公生は気づいていないようです。あるいは気づいていても気づかないようにしているのか…。
” でも__ 彼女は美しい “
” 雪の中の君は___ 美しい “
・演奏家として…
東日本コンクール当日。
手術台へ登るかをりとコンクールへ出場する公生。
なんとかコンクール会場には来ることのできた公生ですが…。
彼の心理状態はまともに弾けるかどうかさえわからないほど最悪な状態。紘子さん曰くコンクールの結果どころか、ピアニストとしても危ういほどです。
紘子さんは公生の母親が亡くなった際に、彼を追い込んだ責任を感じてしまっていますから、今回彼女自身もかなりまいっているようですね。
公生は”弾かなきゃ”と重圧に押しつぶされそうになっています。
次々と出場者が演奏を終え、ついに公生の番が回ってきます。
止めようとする武士と絵美を制し、舞台へと向かう公生。
” でも 弾かなきゃ “
” 僕は ピアニストだから “
” 約束だから “
しかし、公生の手には…
払拭することのできない血にまみれたイメージ。
ここもいわゆる象徴的表現ですね。
“猫の死”のイメージと”かをりの死”のイメージを重ね合わせてしまっている公生。
ちなみに余談ですが、武士の妹の凪は絵見の演奏を聴いて武者震いしながら” 私の進み先に この人がいるのか_ “と言っていました。どうやらプロの道へ進む覚悟を決めたようですね。
1ページ目はここまでです。2ページ目は以下より。
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