大正処女御伽話 第七話 「黒百合の娘」レビューです
夕月と珠彦
季節は移り変わり、大正十一年始夏。
夏の暑さに辟易する珠彦。
いつも元気なユヅもさすがに参っているようです。
立ちくらみをしたユヅに、
” 君ひとりくらい… “
” 支えられるさ… “
そんな珠彦の言葉に甘えて、彼にもたれかかるユヅ。
すっかり仲睦まじい二人です笑
“どうでもいい”と言いながらも、確実にユヅに惹かれていっている珠彦。
黒百合の娘。珠子の来訪。
そんなぎこちなくも、暖かな二人の生活に突如現れた来訪者。
珠彦の実の妹、珠子がやってきます。
珠彦に断りも入れずに家(もともとは志摩家の別荘だった)に押しかけてきたことを咎める珠彦に…
” 死人が何云ってるのよ “
ちなみに、珠彦は事故以降実家では死んだことになっています。
辛辣…というか、実の兄にこの言い様。
かなりいい性格をしているようです笑
珠彦曰く
” 人の負い目に漬け込んではグサリとくる言葉をなげかける “
” まさに悪女だ “
とのこと。
いわゆる金持ちのいやなお嬢様といったところでしょうか笑
年上であるユヅ(ユヅ14歳、珠子12歳)にも、敬意を示すどころか…
完全にいじめっ子です笑
とはいえ、まあこんな風に可愛らしくデフォルメされて描かれていることからもわかりますが、根っからの性悪ではなく実はなかなかいい子なのが後々判明します。
来訪の理由。
さて、急な来訪に、その理由を珠彦が尋ねます。
一旦は話をそらそうとした珠子でしたが…。
どうやら、通っている女学校で人間関係がうまくいっていないようです。
そのせいで、女学校を休んでいたら父親に”珠彦みたいな事をするな”と怒られたので家出してきた…と。
そもそも末っ子の珠子は兄弟の中で一番出来がよく、珠彦とは違った形で孤立していたのだとか…。
” 安心して 面倒はかけないわ “
” 珠彦兄様に嫌われてるの知ってますから “
ユヅと出会った当初の珠彦と同じような眼。
台詞自体はこれまで同様単に毒を吐いているようですが…。
自虐的な感じ…なんやかんやで珠彦に、何か伝えたいこと、というか助けを求めている感じです。
一人きりの心細さ。
さて、そんな珠子ですが…
食事も一人で部屋で取るなど、必要以上の干渉を拒みます。
しかし、夜に木の音におびえるなど、年相応の少女らしい反応も…。
この辺り”一人ぼっち”であることの珠子の心細さなどが現れているように感じられます。
優しい思いやり。。
翌日、お膳を台所へと返しに来た珠子は、ちょうど”あるもの”を作っている最中のユヅに遭遇します。
そのあるものとは…
ミルクキャラメル。
甘いもの好きな珠彦のために、読書のおともにと作っていました。
他人のためにそこまでするユヅを理解できないという珠子でしたが…
” してさしあげたいなって思ったらこの体が動いてしまうんです “
” …それだけですよ “
温かい味。ユヅの手作りミルクキャラメル。。
ユヅの手作りのミルクキャラメルを食べた珠彦。
” うまい… “
” 何だか温かい味だ… “
ただのキャラメルに、”温かさ”を感じる自分に戸惑う珠彦ですが…
” 想いがたくさん込もってますからね “
なんだか素敵ですね。
しかし、珠子はそんな二人の様子を見て反発してしまいます。
ひとりぼっちの珠子。雷の夜の出来事。
相変わらず、一人で部屋で食事をする珠子。
そんな珠子をユヅは心配しています。
珠彦もひとりぼっちの寂しさは痛いほどにわかっていますので、翌日一緒に食事をとるようにユヅから声をかけてくれるようにと頼みます(無理だとは思っているようですが笑)。
そんなことがあった日の夜…
天気は大雨と雷が鳴り響く、大荒れです。
珠子は、夜中に尿意を催してしまいます。
しかし、雷の怖さに一人でトイレに行くことができません。
そんなわけで、ユヅを起こしてトイレに付き添ってもらうことに…。
それにしても、素直じゃない笑
普段は大人ぶっていますが、意外にも子供らしい一面もあるのです。
しっかり、ユヅの袖を掴んでトイレに向かう珠子。
しかし…
すぐ近くに落ちた雷。
その衝撃で、珠子は…
まあ、粗相…つまりおもらしをしてしまったわけです。
一瞬思考停止するユヅでしたが、泣き出しそうな珠子を見て、迅速な行動に移ります。
してさしあげたいなって思ったら…
大急ぎで、珠子を風呂場に連れて行き、湯船に入れます。
もちろん、湯はとっくに冷めてしまっていますので、ユヅは大急ぎで炊き直します。
大雨の中、自分の事を省みずにただただ珠子のために行動するユヅ。
珠子はこれまで人間は損得でしか動かないものだと教えられてきました。
しかし、ユヅは珠子がこれまで散々酷いことを言ったりしたりしたにもかかわらず、珠子のために懸命になって行動してくれます。
その姿に、珠子は…
” ほんと… “
” わけわからないっ… “
珠子の変容
翌日。珠彦が起きだすと、何かから逃げ回っていたユヅが助けを求めます。
ユヅが逃げていたのは…
珠子笑
昨晩の出来事ですっかりユヅになついてしまったようです。
突如として変貌した妹の嬌態に驚きを隠せない珠彦でしたが
” …珠子 なんだか変わったな “
” こんな はつらつとした顔 初めて見たぞ “
しかし、珠彦への態度は相変わらず笑
理不尽っ笑笑
ユヅに異変!?
と、ハッピーエンドかと思いきや…
先ほどまで、元気に走り回っていたユヅに異変が!!
確かに冒頭から、時折具合の悪そうな描写はありましたが…。
第8話に続く…
感想などなど
珠子という娘
珠彦とユヅとの関係がうまくいってきたと思ったら、新たな登場人物”黒百合の娘”こと志磨珠子が登場しました。
主人公珠彦の実の妹ですが、これまた一癖も二癖もありそうなキャラクターです。個人的にはかなり好きなキャラかもしれません。
珠子も珠彦同様、ユヅのおかげですっかり変わりましたね。
初めのうちは人を信じられず、ユヅと出会った当初の珠彦と同じような眼をしていましたが、最後の方は年相応の少女な感じで…。粗相の前と後では全く目が違いますね笑
誰かに甘えたかったんでしょうね。大人びてはいますがまだ12歳ですからね。
ちなみに、珠彦が“自分とは違う形”で孤立していたと言っていますが、事故以前も珠彦は孤立していたのでしょうか。
珠子の本当の目的は??
さて、ユヅのおかげで変わったとはいうものの、始めに珠彦に訪ねてきた理由を聞かれた際の珠子の様子はやや気になりますね。
上でも書きましたが、”人を信じられない”というような目をして、”珠彦に嫌われていることは知っている”と言うあたり…。
あえて珠彦本人の前で、自虐的なセリフを言うというのは、やはり珠彦に何かを伝えたいのではないかと勘ぐってしまいます。無意識的にかもしれませんがSOSを出しているような気がしてなりません。
そもそも“嫌われている”のがわかっている上で、その相手の家に押しかけるという矛盾。
もちろん、他に行くあてがなかっただけなのかもしれませんが…。
これまで父や兄弟のやり方を見て、“人は損得でしか動かない”ということが叩き込まれてはきているものの、まだ12歳ですから、愛や情を求めていてもおかしくありません。
「想い」や「温かい味」などという、珠彦とユヅのやり取りにも過剰に反発してしまっていたようですし、本当は珠子自信が一番そういった”目に見えないもの”を珠彦に求めていたのかもしれませんね。
何故珠彦なのか?
ところで、珠子が”肉親の情”などを求めていたとして、何故珠彦なんでしょうね。
まあ、これまでの描写から他の兄弟がろくでもない人間であることは確かなようですが笑
確か第1話の描写からすれば珠彦には兄、姉、弟、妹が一人ずついるはずです。
珠子の発言から、兄は珠輝、姉は珠代という名前であることが判明しています。
この二人については珠子の話し方からして、珠子自信相当嫌っているようなので、まあいいのですが。
珠彦の弟(名前不明)はどうなのでしょう。珠子が末っ子とのことですから、その弟は珠子にとっては珠彦同様兄ということになります。
しかも、珠彦が17(16?)歳で珠子が12歳ですから、その間となるとおそらく珠子と2、3歳差とそれなりに年齢の近い兄であるわけです。
なのになんでわざわざ珠彦の下に来たのでしょうね。
まあ、実家から離れたかったということもあるのでしょうが…。
上にも書きましたが、そもそも嫌いな人間の下に行きたいわけがないのは人情でしょうから、珠子にとって珠彦は兄弟の中では一番マシ(?)な関係ではあるのでしょうね。
それとも珠彦なら…と下に見てただけなのかな笑それは嫌ですね笑
珠彦とユヅ。
同棲を始めてから半年。
すっかり、仲睦まじくなった珠彦とユヅ。
そんな二人のほんわかとする初心なやり取りがこの作品の見どころの一つ(本当か?)なわけですが…
今回も、そんな心温まるやり取りがしっかり盛り込まれています。
感想の締めにそのひとつをご紹介!!
手作りのミルクキャラメルを珠彦に手束ら食べさせた時のことです。
あやまって、ユヅの指が珠彦の口の中に入ってしまい、赤面する二人。
二人のぎこちないやり取り。ごちそうさまです笑
この直後に珠彦“温かい味”の名シーンへと続くわけです。
それにしても、今回は二人のほんわかに加えて、珠子が!笑
本当に珠子が絶妙にいい味を出してます笑笑
相変わらず、ほっこりな『大正処女御伽話』でした。
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